Hollywood North



ハリウッドノースと関西のお笑いタレント



カナダに流れるハリウッド産業

 「ハリウッドノース」という言葉、聞かれたことがあるだろうか。ハリウッドとはもちろん、映画産業で有名なアメリカのあのハリウッドである。北ハリウッドとはそこから延々と北上したところ、そうカナダのこと。

 カナダがハリウッド・ノースと呼ばれるのにはりっぱな理由がある。ハリウッド映画・テレビ作品の半分以上にトロントやバンクーバーに散在するカナダの制作関連会社が絡んでいて、撮影、編集、特殊効果、ボイスオーバー等々、巨大ハリウッド産業の大きな一環を担っているのである。『タイタニック』、『パールハーバー』といった大作の特殊効果でも、カナダ企業が一役買っている。

 本場ハリウッドでは、自分たちの仕事を奪ってしまうハリウッド・ノースは必ずしも歓迎されていない。2000年にはハリウッドの制作関係者が「カナダボイコット」のスローガンを掲げてデモを行っているし、今年のアカデミー賞の司会を務めたウーピー・ゴールドバーグも、ハリウッドノースの脅威をジョークの中でほのめかしている。アメリカは、ハリウッドノースをけっこう意識しているらしいのだ。

 そこまで映画産業がカナダに流れている大きな理由のひとつはカナダドルが安いことも手伝って、カナダを制作にからめることでコストが削減できること。しかし、それだけだろうか?

アメリカ人とは発想の異なるカナダ人

 「カナダ人は教育のレベルが高く、冬が厳しいから家にこもる人が多いため、技術レベルが高い」

というのは、トロントのC.O.R.E デジタル・ピクチャーズ社のメンジーズ社長。同社は、『ドクター・ドリトル』や『ジョニー・メモニック』といった作品の特殊効果を手がけている。ちなみに同社CEOは、『スタートレック』初代艦長のウィリアム・シャトナー氏。

 私はそして、ハリウッドノースが栄える理由に、カナダ人のアイデアやパフォーマンスがアメリカ人受けするのだ、ということを付け加えたいと思う。

 セリーヌ・ディオン、サラ・マックラクラン、アラニス・モリセット、ネリー・ファタード、トラジカリー ヒップ、ベアー ネイキッド レイディーズといったミュージシャン、ジム・キャリー、ダン・エイクロイド、マイク・マイヤーズ、ネーヴ・キャンベル、前述のウィリアム・シャトナーといった俳優。これら、キラキラ光る世界的大スターはすべてカナダ産だ。アメリカの人口比10分の1のカナダから、なぜこれだけ多くのスターが出るのか?

 カナダ文化がアメリカと似て異なるからではないだろうか。アメリカ人にとって、カナダ人は、フランス語圏の人をのぞいて、一言二言かわしても自分たちと区別がつかない。言っていることも全部わかるし、文化も共有しているようである。しかし、アメリカとは似ているようで実は異なる文化で育ったカナダ人は、彼らとは異なった視点・アイデアをもっているし、実際自分たちはアメリカ人とは違うと認識し、その70%がチャンスを与えられてもアメリカ人になってアメリカで仕事したいとは思わない、と答えている(『マックレーンズ』誌。2001年12月2002年1月号)。この「視点の違い」から生まれるアイデアがアメリカ人にとって新鮮に映り、ユニークな発想の求められるアートやパフォーマンスに生かされる。 

 つまり、カナダ人はアメリカ人にとって「微妙に異国人」なのである。ほとんどのアメリカ人は、前述のようなカナダ人スターをアメリカ人だと思っている。「新鮮なアイデアをもつアメリカ人」なのである。

 同じような現象は日本でも起きている。関西のお笑いタレントがなぜあんなに多いのか?それは、文化の主流とは微妙にずれた場所から生まれる発想は、違うけど、違い過ぎない視点の差があり、それが新鮮でおもしろく映るのではないか。

 映画やテレビ作品の制作にも、ユニークで新鮮なアイデアが必要なはず。ハリウッドノースが栄えるのは、このへんにも理由があると思う●(2002年4月10日)

「社会」の目次に戻る

HOME

E-mail:nhirose@art-words.com
いただいたメールにお返事できない場合があります。


(c) 2008 Naoko Hirose. No parts may be reproduced without permission.